ビジネス
2019.03.26

橋本エンジニアリング、マグネシウムを採用し
世界最軽量級のアクティブ系車イスを開発(1/2)

病院や空港などでよく見かける車イスは、フレーム材がスチール(鋼鉄)やアルミニウムである。大半は中国製で安価だが、15~20kgと重い。クルマへの積み込みや取り回しも大変である。一方、身体に障害を抱える人でも健常者のように活発に生活することが可能となるよう、軽量かつ高強度な素材を多用して作るのがアクティブ系の車イスだ。フレーム材としては、アルミやチタン、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主に使用する。CFRPなら最も軽量で高剛性のフレームを作れるが、素材や加工のコストが最も高いという課題がある。

そこで実用金属で最も軽いマグネシウムに着目し、CFRPに匹敵する剛性と軽さを維持しつつアルミと同価格帯の車イスを製品化することに成功したのが、静岡県浜松市に本社を置く橋本エンジニアリングである。「地元浜松市は元々、自動二輪車の生産が盛ん。以前からレース用車両にマグネシウムを使っているのを目にしていたことが、フレーム材にマグネシウムを用いる発想へとつながった」(橋本社長)。

図1●マグネシウムを採用した、超軽量のアクティブ系車イス「MC-X」
図1●マグネシウムを採用した、超軽量のアクティブ系車イス「MC-X」

しかしながら、同社には完成品製作やマグネシウムの取り扱いの経験が無いことから、産業支援機関である浜松地域イノベーション推進機構の研究部会で知り合った仲間と提携し、業界初の車イスの共同開発、事業化を進めた。例えば、デザイン。同社には最終製品のデザイン部門がないため、自動二輪車やレーシングカーのデザインを得意とするファンクアートデザインに依頼した。作成されたデザイン図面を3D CADのデータに落とし込む作業とCAE(データ解析)は、榛葉鉄工所が支援した(関連記事1)。マグネシウムの溶接は当時どの企業も扱っていなかったが、チタンなど特殊素材の溶接を得意としていた岩倉溶接工業所と共同で技術を開発した(関連記事2)。デザイン上での特徴であるボックスフレームのプレス成形では、キャップの高速温間プレス技術を採用している(関連記事3

このようにして同社は、2017年4月に「MC-X」(図1)の発売に漕ぎ着けた。マグネシウム、チタン、カーボンの高強度軽量材料を組み合わせたことにより、超軽量と高剛性を実現した。MC-Xの重量6.2kgは、「金属フレームの車イスでは世界最軽量」(橋本社長)という。同社はMC-Xで培った技術やノウハウを基に、折り畳み式の「X70」(重量:7.9kg)を新たに開発、2018年9月より販売している。また、近年のトレンドとなっているシングルフレーム構造をデザインの特徴とした「X60」(同6.9kg)も現在開発中である。

30年後も生き残れる会社に

橋本エンジニアリングの橋本裕司社長
橋本エンジニアリングの橋本裕司社長

「ワクワク大作戦」で30年後も会社として生き残る――「ワクワク大作戦」は、2015年の箱根駅伝で青山学院大学の陸上競技部を同学史上初の総合優勝に導いた原晋監督が打ち出したスローガンである。同社ではそれを企業経営に応用し、金型や部品の受託製造業者からメーカーへの転身を遂げるべく日々の業務に取り組んでいる。代表取締役社長を務める橋本裕司氏は、「設定した目標に対してワクワクした気持ちで取り組めば、おのずと素晴らしい結果が出るだろうということで、今あらゆる所でワクワクという言葉を使い、取り組んでいる」と説明する。

同社が基盤事業として手がけている金型の設計・製作では、プレス板金、ダイカスト鋳造、トリミングプレス、という3種類の金型を扱っている。治工具に関しては、「お客様のニーズに合わせて、どんなものでも対応可能」(橋本社長)という。もう一つの基盤事業である部品の受託製造は、土地柄を反映して自動車や自動二輪車の部品が主である。試作用としての一品ものや、専用機メーカーの切削部品などを手がけている。

課題解決に向けた技術提案

静岡県経済産業部
産業戦略推進センター
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